2009年5月15日 (金)

手付かずのアフリカの公園が直面する開発問題

 ニューヨーク・タイムズ  Lydia Polgreen記

 2009年2月22日 ガボン イビンド国立公園

(翻訳協力:荒木和子、編集協力:松崎由美子)

果てしなく続くかにみえるイビンド国立公園の森林を遮るものは、広い帯のように流れる幾筋かの川だけである。地球上にところどころ残された、最も手付かずの熱帯雨林の一つであるこの森林の奥深くには、世界でもとりわけ希少な動物が何種類も跳ね回っているのだが、これは、ガボンが最も汚れた化石燃料といわれる原油に依存してきたことの、直接的だが偶然の結果なのである。

長年にわたってガボンの人々は、石油のおかげでサハラ以南のアフリカ内で最も高い一人当たりの国民所得を享受することができ、その結果、これらの広大な緑の広がりは、ほとんど開発されることなく残されてきた。

しかし、近年石油の枯渇が始まり、ガボンにとって新しい収入源が早急に必要となり、青々と茂ったエデンの園のような風景の将来には、影が差し始めている。

最後の氷河期と同時代の森林では、ガボン国大統領の援助を受けた鉄鉱石採掘のベンチャー企業が、鉱山や鉄道に電力を供給するためにイビンド川にダムを建設しようとしていることで、コンゴウ滝として知られる巨大な滝が破壊の脅威にさらされている。

滝を守るための運動が生まれ、ガボンの多くの市民活動家や環境保全活動家たちにとってそれは国の自然遺産を守るための大きな闘いとなった。世界で第2の広さを誇る熱帯雨林を擁するコンゴ盆地に位置する全ての国の中で、ガボンには、制約されていないそのままの姿のジャングルが最も広く残されている。

「問題は、単にこの滝をそのままに美しく、ということではないのです。これは、政府がガボン国民に対する公約を果たすかどうかということなのです」と、当地の環境保全活動家Marc Ona Essangui氏は語った。

近隣諸国では貧困にあえぐ多くの人々が、作物を植え炭を作るために森林を破壊し焼き払っている。彼らは食料にする目的でジャングルに住むゴリラ、ゾウ、チンパンジー、カバなどの大虐殺を行ってきた。一方、ガボンの人々は都市に集中して、比較的恵まれた生活をしてきた。

1967年以来、術策に長けたOmar Bongo大統領の統治下にあるガボンは、クーデターや市民戦争とは無縁であり、戦争で疲弊した不安定な国々に囲まれた国家にしてはまれな成果を収めている。石油を資源としたこの国の経済は、中央アフリカの国というよりもアラブ首長国に近いものであった。長年にわたってガボンは、真偽の程は別として、国民一人当たりのシャンパンの消費量が世界一だと言われていた。

当地の外交筋やアナリストによると、アフリカで最大の富豪の一人であるBongo氏は、金で平和を買い、肥大化した官僚組織を利用して『どの鍋にも鶏一羽』を、ほぼ達成してきた。また、惜しみない賄賂や投獄の脅しによって政敵の口を封じてきた。

自称自然愛好家のBongo氏はまた、2002年にガボンの国土の10%を国立公園として保存し、今後そこでの伐採、採掘、狩猟や農耕は認めないと約束した。しかし、その公約は今、経済的な現実に直面している。この国は金を捻出するための新しい方策が必要になってきたのだ。

地元のピグミー族やバンツー族は何世紀にもわたってコンゴウ滝を崇拝してきたが、その理由は地形を見れば明らかだ。この滝は、滝口から流れ出る急流が6つに分かれて、切り立った崖を怒涛のように泡立つ滝つぼへと流れ落ちる。水はさらにイビンド川の2つの支流となって下り、太陽と月という名で知られる1対の滝をごうごうと流れ落ちる。

ここはかつて手付かずの森林であったが、昨年中国人の一行が鉱業省発行の就業許可証を

携えて現れた。中国の合弁企業が、鉱石を南に運ぶための鉄道や鉱山に電力を供給する巨大なダムの建設を計画していたのだ。

野生動物保護協会で働く自然保護運動家の西原智昭氏はこのことを憂慮していた。イビンド国立公園とその北側にある別のミンケベ国立公園の境界線は鉱山が含まれないように引かれており、その鉱山はガボンが石油で潤っていたため、使われることなく放置されてきた。

西原氏はダムについて「他にも建設に適した場所があるはずなのですが、このプロジェクトはトップレベルで承認されていると聞きました」と語った。

西原氏はこのような例を以前経験したことがある。2006年、浜辺をゾウが歩き回る緑豊かな保護区ロアンゴ国立公園に、中国の国有石油会社シノペックが現れた。政府発行の公文書を楯に、公園で耐震実験を始め、石油の埋蔵量を調査するために大音響の爆破を行った。 そのうえ作業員に支給する食料がわずかだったために、現地の公園関係者によると、彼らは希少動物を狩猟していたという。

西原氏は、環境規制を強化するよう政府を説得し、公園が本当に保護されているかどうかを確かめるために中国人の作業員達と何ヶ月も暮らしを共にすることさえした。結局一行は掘る価値のあるものは何も見つけられずに荷物をまとめて去って行き、被害は最小限で済んだ。

しかし、今回は政府の環境規制当局者はお手上げだと諦めてしまい、自分達にできることは何も無いと西原氏に話したということだ。フランスのエンジニアによって1960年代に出された結論では、公園の外側の急流にダムを作れば、環境への被害をより少なく、より安価に同量の電力を供給できるということであったのだが、と西原氏は言う。

中国の作業員がジャングルに切り開いた道路は、幅の広い赤い傷となって残り、かつては密猟者が足を踏み入れることのできなかった森林への扉を開くこととなった。地元の担当者によると、Bongo氏がダム建設の第一石を置くために降り立つヘリコプターの着陸場として広い空き地が切り開かれた。

ダム建設は今のところ保留状態となっているようだ。作業員は現地の担当者に、ガボン政府と契約条件についてさらに交渉する必要があるからと告げ、引き上げてしまっている。その間に鉄の価格が下落し、財政危機によって鉱山業の見通しは疑問視されるようになった。しかし政府は、このプロジェクトを進めるために必要なことは何でもすると語った。

「何があっても、誰が何を言ってもこの鉱山計画は進める」とBongo氏は昨年宣言した。

ガボン政府は、長いことエコツーリズムを頼みにしてきたが、遠方であることや費用がかかること、また、観光整備が遅れていることなどから、ガボンにやって来る観光客は限られていた。

「彼らは、一夜にしてアフリカのコスタリカになれると考えていたのです。でも、そんなにうまくいくものではありません。何年もかかるものなのです」と、野生動物保護協会のガボンプログラムの責任者Joe Walston氏は語った。

また、ガボン国立公園庁の幹部Franck Ndjimbi氏が語ったところによると、政府の環境保護の公約は依然として揺ぎ無いものであるという。「我々には、ガボンが環境保全のモデルケースとなり、エコツーリズムの目的地として世界中に知られるようになって欲しいという大望があります。これは、長期にわたる公約なのです」と語った。

 一方、ロアンゴ国立一方、ロアンゴ国立公園のビジターセンターを管理しているYvan Essongué氏は、政府は鉱山を探すのではなく、公園を守るためにさらに多く支出しなければならないと語った。パークレンジャーと共に働く同氏は、「密猟者は四六時中見かけますが、追跡しようにもボートがなかったのです。この広大な公園にレンジャーはたったの15人です。油断したら、この国の素晴らしい財産はすぐに失われてしまいます」と語った。

http://www.nytimes.com/2009/02/22/world/africa/22gabon.html?scp=1&sq=Pristine%20African%20Park%20Faces%20Development%20&st=cse

タドバ・トラ保護区から、トラ2頭減る

 Daily News & Analysis Ashwin Aghor記 

 2009年2月28日

(翻訳協力:宮原小絵、編集協力:吉岡由紀)

 インドに生息するトラの数が2頭減った。これら2頭の大型猫の死はタドバ・アンダーリ・トラ保護区(Tadoba Andhari Tiger Reserve、TATR)で報告された。木曜日の夜遅く1頭の雌トラが死亡し、その4日前には森林局職員が1体の動物の骨を回収した。            

 保護区のBhanuskhindi近くで大人の雌トラが死んでいるのが発見された。「現場の状況からトラの死因は自然死とみられる。雌トラの推定年齢は14歳で、飢えのために死んだ。死骸(しがい)に損傷がないことから密猟によるものとは考えにくい」とTATR、森林保護管理責任者・現地責任者のSheshrao Patil氏は話す。

 情報によれば2月21日、森林局職員は保護区モハーリ生息域の第163区画でトラの骨が発見されたという連絡を受けた。「この地域のボランティアがトラの死の情報を得て、すぐに森林局へ報告された」とインド野生生物保護協会(Wildlife Protection Society of India、WPSI)、中央インド責任者のNitin Desai氏が話す。

 森林局職員の一団は現場を訪れ、トラの骨と皮の一部を回収した。「腰帯の形を見ると、骨は雌のもののようだ。しかしこれは法医学的検査によってのみはっきりわかること」とDesai氏。

 情報筋は、トラは復讐(ふくしゅう)のために殺されたのだと言う。このトラは、デバラ村に住む50歳の男性Ragho Kulmethe氏の若い雄牛を殺した。これで2頭目となる獲物を仕留めたトラは、Kulmethe氏が毒を盛った若い雄牛の死骸(しがい)を食べて死亡。その後トラの死骸(しがい)は皮をはがれて切り刻まれた。

 森林局職員は同氏の自宅を家宅捜索し、トラの骨を押収した。Kulmethe氏は逮捕され、タドバへ連行されるところだったが、村民が森林局職員に無理やりKulmethe氏を解放させた。

 しかしながら、Patil氏はトラが復讐(ふくしゅう)によって殺された可能性を否定している。「トラは2カ月ほど前に死亡していたはずだ。この件に関しては引き続き調査している」とPatil氏は話す。

 ナグプールに拠点を置くNGOトラ調査保全トラスト(Tiger Research and Conservation Trust)のHarshawardhan Dhanvate氏はこう語る。「大型肉食動物への密猟の脅威に対してより真剣に取り組む必要がある。それぞれのトラを失ったこと、特にトラやヒョウの生息地として保護されている区域のトラを失ったということは、種の存続に重要な影響を及ぼす」

http://www.dnaindia.com/report.asp?newsid=1234877

鯨殺しは世界の漁業を救うだろうか?

 TIME

 Brian Walsh

 2009年2月17日

(翻訳協力:石原洋子、編集協力:是川洋子)

何か逆のことを聞いているかも知れないが、くじら肉は美味しいものではない。このことは私の次のような経験に基づいている。東京で記者をしていた時、私は以前に日本の捕鯨業界のロビイストたちが議員向けに開催したくじら肉のイベントに参加したが、そこにはくじら麺、くじらの刺身、くじらのフライ、くじらのカナッペなどが並べられていた。しかしその禁断の神秘性にもかかわらず、くじら肉は風味もすっかり乏しく、他に何も手に入らない場合でもなければ食べないような種のものである。(昨年の動物トップ記事を参照)http://www.time.com/time/specials/2008/top10/article/0,30583,1855948_1864552,00.html

そして正にこれが、戦後の貧困な時代に安価な蛋白源として、日本人の食事において重要な役割を占めた理由となるのである。ところが日本が豊かになるにつれ、くじら肉の人気は次第に下がっていった。それでも日本は(ノルウェーやアイスランドと共に)鯨の捕獲を継続し、その捕鯨高は2006‐2007年期には800頭を超し、22年間続いている国際的な商業捕鯨禁止の解除を強く要求している。捕鯨賛成派は、食料の安全確保のために捕鯨は必要だと主張するが、今日の平均的日本人の鯨肉消費量が年間30グラム余りに過ぎないため、その主張は勢いをなくしている。

それゆえ日本の捕鯨業界はここ数年で異なる防御策を試みている。激減している水産資源の危険な兆候を減らすために、鯨の間引きが必要だというのである。結局のところ、鯨は大量の魚を食べるため、捕鯨推進派が述べるように鯨の個体数を管理することは賢明な「生態系管理」であるということにも頷けるだろう。しかしScienceの2月13日号での新たな記事によれば、そのことは事例にほとんど当てはまらないということが明らかにされている。アリゾナ州立大学の保全生物学者そして本記事の主幹著者であるLeah Gerber氏は次のように話す。「我々の基本的見解は、鯨の個体数を減らしても商業漁業可能な水産資源量にはほとんど影響しないということです。」言いかえれば、鯨を殺しても枯渇した漁業を生き返らせることにはならないだろう。("Why the Stamford Chimp Attacked"参照)

http://www.time.com/time/health/article/0,8599,1880229,00.html

 なぜなら海洋生態系と食物網は、私たちが考えるような捕食者-被食者という1対1の関係よりはるかに複雑だからである。Gerber氏の研究グループは、ヒゲ鯨が繁殖する西アフリカ沖やカリブ海の海水を分析し、鯨と魚の間にある摂食行動の相互関係を示すような生態系モデルを作り出すため海洋データを採掘した。(これらの海水をある程度選択した理由の一つに、日本がこのクジラ食害論を利用し、捕鯨禁止の解除に向けてカリブ海やアフリカ諸国の支持を得ようとしていることがあげられる。)

その生態系モデルにより、科学者たちはクジラの個体数が減少した場合に何が起こるのかを調べることができる。鯨の数は商用魚の個体数にはほとんど影響がないことが判明したが、その理由の一つとして、海洋生物種である鯨の餌はオキアミやプランクトンであり、人間の食卓にのぼることが全くありそうにないということがあげられる。「人間が好んで食べる魚介類は[鯨の餌]よりも食物網において高い位置にいます。」とGerber氏は述べる。現在の鯨の個体数は今もなお、エイハブ船長(訳注:1851年発表のメルヴィルの「白鯨」より)が鯨を追いかけて(失敗したが)いた時代のごく一部にすぎず、さらに商用魚の個体数が減少の一途にあることもまた紛れもない事実である。

国際捕鯨委員会が数ヶ月後に開催される予定だが、日本とその同盟国は商業捕鯨の解禁を再び要求する意向であり、それはScienceの分析を大いに損なうような訴えである。ただ一つ、日本の議論の中で否定しえない事実がある。世界の商業漁業は苦境にたたされており、悪化してきているということだ。2月12日に開催された米国科学振興協会(AAAS)の年次総会で報告された新しい研究によると、海洋生態学者のWilliam Cheung氏は、まぐろ、にしん、車えびなどの世界の商用魚や甲殻類に、気候の変化が致命的な影響を与えるだろうと発表した。魚類は海温の上昇を免れるために極地の方へ逃れ、多くの種が馴れ親しんだ生息環境から姿を消すのも同然である。多くはその変化に適応できず、気候の変化により大西洋タラの流通は2050年までに半減するだろうとCheung氏は予測した。「恐ろしいことに、これは将来たまたま起こりつつある問題ではありません。」Cheung氏はさらに言う。「今も同様のことが起きているのが分かっています。」

商業漁業の保護は、鯨の間引きで解決できるというような単純なものではなく、非常に複雑な問題である。しかし世界の漁業国が魚の過剰搾取を控えることなく絶滅寸前の海洋生息環境の保護を怠れば、ついに鯨以外何も食べる物が残っていないということになるかもしれない。そしてまじめな話、それには辟易するだろう。http://www.time.com/time/health/article/0,8599,1880128,00.html

トラに刺激的な計画

 EurekAlert!

 2009年2月26日

(翻訳協力:倉橋夏子、編集協力:木田直子)

ニューヨーク:野生生物保護協会(WCS)は今日、世界銀行および地球環境ファシリティ(GEF)と共同で、全生息域のトラの保護活動に2800万ドル(約27億4千万円:1ドル=97.85円 3月29日現在)を充当することを発表した。WCSは、トラが生息しているアジア各国で実際に長年にわたりトラの保護活動を続けてきたいくつかの保護団体の協力を得て、Tiger Futuresと名付けられた新プロジェクトを率いる。

Tiger Futuresプロジェクトは、世界銀行グループのRobert B. Zoellick総裁が昨年6月に発表した世界トラ・イニシアティブ(GTI)に基づいて、初期の支援活動を行い、問題にすばやく対応できるようにする。世界トラ・イニシアティブには、トラ生息国間のコミュニケーションを促進し、トラ生息域における世界銀行プロジェクトの見直しをはかり、トラ保護のための新しいモデルを率先して立ち上げるなどの計画が含まれている。GTIはまた、密猟や違法取引の削減努力を強化し、保護活動のための新たな資金調達手段も探る予定である。イニシアティブの一環として、世界銀行は、2010年に開催されるトラ年サミットに向けて世界中のトラ専門家たちを集めた会議の招集を提案した。

Tiger Futuresプロジェクトは、トラ生息域にあるすべての国にトラ保護のための専門的な議論への参加を促すことによって、世銀によるイニシアティブを補足する。また、TRAFFIC、WWFおよびIUCNをリーディングパートナーとして、各保護団体に幅広く参加を求める。その他の活動として、野生のトラが直面する主な脅威のひとつである違法な野生生物取引を抑制するために、中国とベトナム双方の政府と緊密な協力体制をとることも計画されている。

「この協定は、生息域諸国と協力して世界で最も愛されている動物のなかの1つであるトラを救うために、世界銀行、GEFと保護団体の組み合わせというユニークなパートナーシップを実現しました」と、WCSの会長で最高経営責任者(CEO)のSteven Sanderson博士は評価する。「このプロジェクトは、実にタイミングよく発足したといえます。野生のトラの苦境は緊迫しており、いま残っているトラを保護するためには多くの最前線で今すぐ行動を起こすことが必要なのです」 

多くのトラ個体群の生存は、トラの生息域である諸国間の協力にかかっている。将来、長期にわたってトラの生存を確実にするためには、意見の一致が必要不可欠だ。

世界銀行グループのRobert B. Zoellick総裁はいう。「トラの保護に関する意見を一致させ、早期に適切な行動がとれるようにするための最初の1歩として、Tiger Futuresプロジェクトの発足は歓迎できるものです。プロジェクトでは、各国の保護団体が協力することの必要性を認識しています。また、多くのトラ個体群が生き残れるかどうかは、トラが住んでいる各国の政府がとる行動にかかっていることも理解しています」

GEFのCEO兼議長であるMonique Barbut氏の意見はこうだ。「トラの絶滅を防ぐための戦いは、世界中の生物多様性が直面しているのっぴきならない危機の象徴ともいえるでしょう。私たちはこの新たなイニシアティブでトラの保護に貢献する決意を固めていますが、同時に、絶滅が危惧されるすべての種とそれらの生存に必要な生態系にも目を向けるつもりです。健全な生態系は、開発途上国の農村地帯に住む住民にも、安定した暮らしと安全をもたらすのです。ですから、絶滅危惧種から始めて、最終的には、初期投資の範囲を大幅に超えた有用な成果を得ることができます」

今日の声明は、ニューヨークのロックフェラー大学で、WCSの著名な自然保護論者George Schaller氏の功績を讃えるシンポジウムで発表された。Schaller氏は、1960年代にインドでトラの研究を始めたパイオニアとして知られている。

トラはもともと、中央アジアのカスピ海からジャワやロシアの極東地域まで、アジアのほとんどの地域に生息していた。今では、かつての7%ほどの生息域しか持たないと推測されている。今日トラが見られるのは、南アジアと東南アジアでは分散した何か所かに限られ、ロシア極東地域と中国北東部には小さな個体群がいくつか残るだけである。生息域がこれだけ縮減した状態では、繁殖率が妥当なトラ個体群であっても、現在残されている生息地のおよそ10%を占めるにすぎないだろう。しかもこれらの生息地は、ほとんどが厳重に管理された保護区内にあるのである。これらの生息地から外に出たトラは、獲物不足により、または人間に狩られることによって、短期間のうちに姿を消す可能性が高い。

トラが直面する主な脅威としては、森林生息地の消失と環境の悪化、トラを獲物とする合法および非合法な狩り、それに、人間との摩擦や、毛皮や他の部位を東洋伝統薬の原料などとして密売するための密猟を原因とするあからさまな殺りくが挙げられる。

今も昔も、野生のトラの個体数は正確にはわかっていない。しかし、200年前には、野生のトラが地球上におそらく10万匹から50万匹はいたと思われる。今日の生息数は、飼育されている2300匹の成獣を含めて、およそ5000匹である。トラは、国際自然保護連合(IUCN)によって絶滅危惧種に指定されている。

スマトラトラ、生息地の森林の減少に伴い絶滅の危機に

 タイムズ

 2009年3月3日

(翻訳協力:影山聡明、編集協力:佐藤梨絵)

スマトラトラは、主要な哺乳類の中で21世紀最初に絶滅する種になる危機に晒されている。というのもインドネシアの島の住民が、堂々としながらも獰猛なこの肉食動物と破壊的な争いをしているからである。

すでに激減しているスマトラの森林が更に狭まることによって、農民、狩猟者、違法な伐採者への襲撃が増え、前月だけで、少なくともトラ4頭と9人の人間が殺されている。

 野生下で生息数400頭以下と目されるスマトラトラは絶滅危惧ⅠA種に指定され、現存する全6亜種のうちでもっとも危険な状態にある。

最近の襲撃の犠牲者の複数が、普段ならほとんど人肉を食べることのないトラにより貪り食われたという事実は、いかに彼らが飢えて捨て身になっているかを示している。それは彼らの生息域における経済搾取が、更に小さくやせた森林の飛び地へとトラを閉じ込めたためである。

トラによる襲撃が日常的になっている中で、保護活動家らは、村人達が、恐怖から彼らを追い詰め殺してしまう前に、この人食い動物を罠で人道的に捕獲し、集落から遠いところに放そうと急いでいる。

「人間がトラの生息地へ侵入したことが、この危機的状況と、絶滅危惧動物の更なる脅威を生み出している。これらの殺害を踏まえれば、当局は国民の安全を最優先に考え、スマトラにおける不法な森林伐採を止めるよう働きかけなくてはなりません。」自然保護団体WWF(世界自然保護基金)のIan Kosasih氏はそう述べる。

インドネシア政府によると、毎年平均5~10頭のトラが殺されているが、2009年はこれまでにない早いペースで虐殺が進んでいる。 1週間前、ジャンビ州のイドゥラギリ・ヒリルにあるパーム油のプランテーションで、警備員を襲撃した一頭のオスのトラが、ヤリで突かれて殺された。この年4頭目の犠牲である。

2月には、隣接するリアウ州で3頭の若いトラが、食料を探して村落の中をさまよった後に殺された。もう一頭のスマトラトラは保護活動家が捕獲に成功した。

 しかし、少なくとも6人が噛み殺され、さらに数人が襲撃により負傷した。最も陰惨な攻撃は、Suyudと言う名の50歳の男性が、一緒にいた21歳の息子Imam Mujiantoと共に山小屋で殺された件だろう。若者はトラにより、脳、心臓、肝臓を食べられた、と地方記事は伝えている。

「一ヶ月以内で6人もの人間が殺されるというこの衝撃的な出来事は、ジャンビがどれほど悪い状況にあるかを示す極めて悲しい実例です。」ジャンビ州自然保護局長であるDidy Wurjanto氏は以下のように続ける。「それは、我々が自然林を保護し、トラ達に住みかを与えることに真剣に取り組まなければならないという、警告なのです。」

世界全域のトラの生息数は、前世紀のうちにその95パーセントが減少し、すでに3亜種が絶滅している。その中には、バリトラと、1970年代後半を最後に野生から姿を消したジャワトラの、インドネシア原産の2種も含まれる。

密猟者は、毛皮や、漢方薬の材料として重宝される部位のためにトラを追う。過去数週間にスマトラで殺されたトラの死体はすぐに姿を消した。トラの死骸は、3,200ドル(約31万円)の価値があり、インドネシアの村人にとってはひと財産に値するのだ。

 しかし、狩りや配偶者探しなどの行動に広大な土地を必要とするトラにとって、居場所は狭まる一方だ。道路建設、農業、林業、そしてスマトラでは特に、利益の高いパーム油のプランテーションをつくるための森林開拓が、点在する小さな自然林へとトラを追いやっている。

スマトラの平地林は毎年2700k㎡ずつ減少している。ルクセンブルクより大きな面積である。

「トラが菜食主義者になる事は期待できません。」自然保護局のNurazman Nurdin氏はAP通信にこう話す。「彼らには肉が必要であり、縄張りに侵入した人間は相対的にみても標的になりやすいのです。」

$1=\96.9 /2009年3月30日現在)

シャトゥーシュ禁止令、カシミール織工に打撃

 The National 海外通信員 Yusuf Jameel

 2009215

(翻訳協力:宮内隆文、編集協力:吉岡由紀)

インド・シュリーナガル // インドの中央捜査局および新しく設置された野生生物犯罪管理局は今月、ニュー・デリーの国際空港で数百万ドルに相当する不法なシャトゥーシュの肩掛けを押収した。職員によると、チルーの名でも知られる絶滅危機に瀕するチベットレイヨウの毛から織られた衣料品の積荷はカタールやオマーンへと配送される予定であった。

カシミールの中心地や、インド・ラジャスタン州内のジャイプルで行われていた取引が相次いで告発された。

その軽さと柔らかさ、そして暖かさで知られるシャトゥーシュの取引は、絶滅のおそれのある野生動物の種の国際取引に関する条約(Convention on International Trade in Endangered Species: ワシントン条約)によって禁止されている。インドは1976年にその禁止令を是認し、シュリーナガル政府は野生動物活動家や環境保護論者からの圧力の高まりを受けて、2002年に同じくそれを支持した。

この空港での押収は、カシミール野生生物当局が地元住民の所持品であるシャトゥーシュの肩掛けや製品953品に、1グラムに満たない重さのマイクロチップのタグを付けたのに続いて起こった。これは、カシミール市民が所有する全てのシャトゥーシュ製品について登録を行わなければならないというインド最高裁判所(Indian Supreme Court)の命令を受けたものだ。このマイクロチップには登録番号と寸法、製品所持者の写真が組み込まれている。

「所有者はその製品を使うことは可能ですが、売ることはできず、また証明書の譲渡を行うこともできないのです。」シャトゥーシュの目録を掌る職員A・Naqash氏はそう語り、デジタル式タグには書き替え防止の機能が付いている点をつけ加えた。

ニュー・デリーの職員によると、シャトゥーシュの肩掛けは、長い間富裕層に好まれる織物を生産してきたカシミールのクローゼットからだけでなく、隣接したパンジャブやデリー、ジャイプル、ハリヤーナー、ムンバイ、コルカタ、中東、ヨーロッパなど各地でも発見されるという。空港で押収されることがその裏付けだと,彼らは主張する。

「肩掛けが違法な所持品とされる可能性が出てからかなり長い間、多くの人はそれに気付いていなかった、もしくは気にしていなかったのです。」インド野生生物トラスト(Wildlife Trust of India) 長官のAniruddhaMookerjee氏は言う。彼によると、カシミールでしか織られていないシャトゥーシュの世界的な取引が続いているため、政府は禁止令を真面目に実行してはいないのだ。

「助けてください。お願いです。」ニュー・デリーとインドその他の都市にあるいくつかの高級ブティックを飾るポスターの中でチルーが嘆願している。そのポスターは1つのシャトゥーシュ肩掛けを生産するために5頭のチルーが殺されると主張する。

しかしシャトゥーシュの禁止令には、インド政府にとって問題を複雑化させているもう1つの側面がある。それは肩掛けに刺繍を施す職人や、貿易で繁盛している人々の生活への脅威だ。

カシミールの職人と手工芸品の貿易商は、シャトゥーシュの肩掛け1つのために5頭のチルーを殺しているとの告発を軽く笑い飛ばす。上質の毛は、刈り込みによって,または動物の体が触れた茂みから採集されていると彼らは主張する。夏の到来に伴ってチルーが冬毛を落とす時に、茂みや低木に残された下毛を集めるのが伝統的な方法だ。

「金の卵を産むガチョウを誰が殺すのでしょうか。」カシミール手工芸取引商福祉協会(Kashmir Handicrafts Trader’s Welfare Association) の代表HashmatullahKhan氏は言った。「この取引に生活がかかっている私たちはそんな愚かなことはできませんよ。」

カシミール商工会議所(Kashmir Chamber of Commerce and Industry) 所長MubeenShah氏は、カシミールでは3万以上の家庭が約38.4億円(2009327日:1インドルピー1.921)のシャトゥーシュ取引に頼っていると言う。「禁止令は織工、貿易商やその家族に苦難をもたらしています。多くの職人の家族は飢餓に直面しているのです。」と彼は言う。

最近、彼はインドの首相ManmohanSingh氏と会談し、それらの事例について訴えた。

「私はインド政府が、生計のかかったカシミールのムスリム達の問題であることが恐らく原因で、この問題に対して適切な対応をしてないことを伝えました。」Shah氏は語る。「(Singh首相は)当然それを否定しましたが、実際のところニュー・デリーは『絶滅の危機に瀕する種の保存に関する法律』に認められている留保の余地を残すことなく貿易の禁止令に合意しているのです。それに、カシミールのシャトゥーシュ産業部門とは協議がされていません。」

彼は、商工会議所の代表団も、援助を約束しているカシミールの産業大臣SurjeetSinghSalathia氏との間に最近問題をもたらしていると言う。

「これは私たちにとって深刻な懸念をもたらす問題だと伝えました。一刻も早く解決策を見つけてもらわなければならない。」Shah氏は話す。「ほとんど毎日のように、打撃を受けた人々、特に貧しい女性職人が苦難を訴えるために私たちの事務所に来ています。」

カシミールの貿易商と職人は、チルーの商業的牧畜がこの問題を乗り越える助けとなると提案した。「政府は他の選択肢を探すべきです。牧畜下での繁殖は最近まで試みられたことはありません。」Shah氏は言った。

一方、保護論者や動物愛護運動家によって、カシミールのシャトゥーシュの織工が代替のファッションブランド立ち上げを組織するよう薦める大規模な運動が展開された。そのブランドとして、絶滅危惧種でない家畜化されたヒマラヤヤギから採れた毛を使った、伝統的なカシミール手工芸のパシュミナであるパシュマがある。

「代替になり得るものを与えられなければ、たとえどれだけ強力な対策を持ってしても、シャトゥーシュの商取引を防止するのは不可能です。」野生動物トラスト(Wildlife Trust) Mookerjee氏は話した。「私たちはその役割として、シャトゥーシュに劣らぬ製品パシュマを生み出し、それを国際市場で販売すべく、インド野生生物トラスト(Wildlife Trust of India)並びに国際動物福祉基金(International Fund for Animal Welfare)からの援助を受け、シュリーナガルを拠点とする職人団体、カシミール手工芸パシュミナ促進トラスト(Kashmir Handmade Pashmina Promotion Trust) を立ち上げました。しかし、残念ながらカシミール政府はそれを奨励してはいないのです。」

http://www.thenational.ae/article/20090215/FOREIGN/133584890/1103/NEWS

象牙の需要増加がアジアゾウを脅かす-調査報告

 ロイター通信 

 2009年2月16日 シンガポール

(翻訳協力:豊永啓子、編集協力:佐藤良子)  

TRAFFIC(野生生物国際取引モニタリング・ネットワーク)の調査によると、違法取引される象牙の価格上昇と需要の高まりによって、インドシナに現存するゾウの生存が脅かされている。

2月16日、月曜日に発表された報告書によると、TRAFFICがベトナムで調査した669店舗のうち11パーセントが、2,500個近くの象牙製品を販売していたという。

未加工象牙の多くは、隣国のラオス産のもので、残りはベトナム及びカンボジア産と見られている。アフリカ産の未加工象牙は見つからなかった。

TRAFFIC東南アジア局長であるAzrina Abdullah 氏は声明の中で、「これは、既に存続が危惧されるアジアゾウの個体数に、さらなる圧力がかけられていることを示す憂慮すべき傾向である」と語った。

国際自然保護連合の統計によると、ラオスには多くて1,000頭、ベトナムには約150頭のゾウが生息している。

過去のTRAFFICの報告書で、ミャンマーにおいて生きているアジアゾウと象牙の密輸が広く行われている事実が明らかとなった。

最近行われたTRAFFIC調査では、ベトナムにおける違法象牙の取引価格は世界最高値とも言われ、象牙の売値は1キロあたり約147,000円(1ドル=約98円・2009年3月28日現在)、小さくカットしたもので1キロあたり約182,574円と報告されている。

「違法象牙への需要は依然として続いており、その結果、価格の高騰を招いている」と、 Abdullah 氏は話した。

報告書によると、主な買い手は、中国人(香港、台湾を含む)、タイ人、地元ベトナム人、ベトナム系アメリカ人及びヨーロッパ人だという。

「ベトナムでは1992年に象牙取引が禁止された。だが、法律上の大きなな抜け道が存在している。禁止法以前にさかのぼる在庫品に関しては、販売を続けられるからだ」と、TRAFFICが公表した。

「そのため、店舗主は最近加工された象牙を、違法に再入荷することが可能である」と声明で述べられた。

同様の調査で、ホーチミン市及びハノイの店において、2008年、象牙製品の数が2001年より減少していたと報告された。しかし、加工象牙は、ブローカーを通して直接買い手へ販売されるか、または販売代理店を跳び越してインターネット上で販売されるケースが増えたと報告された。

報告によると、ベトナムは、絶滅危惧種の取引を管理する国連会議に同意し、違法の象牙取引を助長している法の抜け道を断つよう政府に要求したという。

(記事:David Fogarty、編集:Sanjeev Miglani)

http://www.reuters.com/article/latestCrisis/idUSSP427805

ロシアのエリートによるクマ狩りで死に追いやられる大勢の子グマたち

 The Sunday Times
 2009年2月15日

(翻訳協力:梅村佳美、編集協力:柳川さやか)

 ロシアでは、政治家や富裕な実業家によるトロフィーハンティングにより、毎年3500頭以上の子グマが親を失っている。そしてその大部分が幼いために野生の中で生き抜くことができず、死に追いやられている。

 裕福なハンターらは数千ポンドを支払い、シベリアやロシア極東のカムチャツカ半島でヒグマやツキノワグマの狩りをする。大半のハンターは狩猟許可を得ているが、それでも1歳未満の子どものいる母グマを殺すことは厳密には違法行為である。しかしこの規則を全く守らないハンターが多い。

 無節操なハンター達に冬眠中の母親を殺される子グマは多い。環境保護活動家たちが非難するのは、巣穴にいるクマを殺すことが合法とされている点だ。一般的なのは、クマを起こし、脅して巣穴から追い出す方法である。

 眠りから覚めたばかりで目先が利かないというのに、母グマは姿を現した途端に銃殺される。ハンターは、子グマがいるかどうかなど確かめもしない。

このような行為の非合法化に取り組んでいる国際動物福祉基金(IFAW)のMasha Vorontsova氏は「冬眠中にクマを狩り殺すなんて冷血だ」と語った。

 大抵の場合、残された子グマたちは、餓死する運命にある。ペットとして村人に飼われたり、街角を拠点とした写真家や移動動物園、サーカスなどに引き取られたりするクマもいる。また、自然保護活動家たちは一部の子グマを保護し、十分成長して自分で餌をとれるようになると森に帰している。

 密猟者が告訴されることもあるが、彼らは裕福で強力なコネを持っているため、「クマに子どもがいたなんて知らなかった」と主張するだけで処罰を免れている。ロシアの権力の象徴として、クマは長年高い人気を誇る戦利品である。クマ狩りは旧ソ連共産党の大物らに人気のスポーツで、その年老いた元政府指導者達でも命中しやすいように、ヒグマは鎮静剤を打たれていた。

 ロシア政府内関係者も在籍する有力狩猟圧力団体は5年前、ツキノワグマの狩猟を解禁させた。これにより懸念を抱いた自然保護活動家たちは、ツキノワグマが絶滅の危機に瀕していると警告している。

 しかし、ロシア政府はクマを保護するどころか、ハンターが母グマをしとめる際に子グマを一緒に殺してしまうことを認める法案を昨年可決した。ある政府内関係者は「ハンティングは、政治家や実業家などのエリートの間で非常に流行しています」と述べた。

 「動物の希少価値が高ければ高いほど、トロフィーとしての価値も高まるのです」

密輸横行でマレーハコガメが窮地に

 トラフィックが保護を啓発、アジアで爬虫類・両生類の密輸横行

 2009年2月23日

(翻訳協力:桝井二郎、編集協力:松村理沙)

 2009年2月23日、マレーシア、クアラルンプール ― 適法な数の10~100倍になる違法取引によって、かつてはインドネシア各地でよく見かけたマレーハコガメが絶滅寸前であると、野生生物のモニタリングネットワーク、トラフィックが新たに報告した。

 マレーハコガメは食用や漢方薬として利用されており、香港や中国、マレーシアが主な市場で、ほとんどがインドネシアから輸出されている。また、ペットしても主にアメリカ、ヨーロッパ、そして日本に輸出されている。

 今回の調査で、ジャワ島、スラウェシ島、スマトラ島、カリマンタン島で少なくとも18業者が、マレーハコガメの違法な取引を行っていることがわかった。

 取引される数は、平均すると週に2230頭に及ばないが、年間でみると合計210万頭にもなる。このほとんどが輸出されるのだが、インドネシアにおけるマレーハコガメの公式な年間輸出割当数は、18,000頭(科学的根拠に基づく数値ではない)にすぎないのである。

 「現在取引されているマレーハコガメの数は、公式な輸出割当数の確実に10倍はあるが、100倍近くに達している可能性も十分ある」と、本報告書『インドネシアにおけるマレーハコガメの取引実態と管理』の筆者、Sabine Schoppe博士は述べた。(http://www.traffic.org/species-reports/traffic_species_reptiles19.pdf(PDF, 2.4MB)を参照)

 調査した18業者のうち13業者が、爬虫類の取引について政府自然保護局(PHKA)の出先機関に登録していたが、ハコガメについて届け出ている業者はなかった。当局では、定期的にこれらの業者を調査することが求められている。トラフィックは、事前に今回の調査の結果を提出済み。

 スマトラ島リアウ州とスラウェシ島の捕獲業者は、野生のマレーハコガメの数が大幅に落ち込んでいると報告しており、ペットを取扱う登録業者によると、10年前に比べハコガメを入手するのは難しくなったという。

 「現在のレベルの違法捕獲が続けば、インドネシア中のマレーハコガメが取り尽くされてしまうだろう。そのことはすでに、捕獲や取引の集中地域では明らかである」と、 Schoppe博士は述べた。

 2000年、絶滅危惧種の国際間取引を規制するための措置であるワシントン条約(CITES)の付属書IIに、マレーハコガメの名前が記載された。しかし、本報告書によると、付属書に記載されてからマレーハコガメの取引量は増加しており、スラウェシ島マカッサル、スマトラ島メダン、ペカンバル、テンビラハン、カリマンタン島バンジャルマシンの各港を通して、密輸量が過去最大となることがわかった。 

 

 トラフィックサウスイースト アジアのシニアプログラムオフィサーであるChiris R. Shepherd氏は、「当局が専念すべきなのは、違法取引の撲滅と、捕獲による影響を受けない、現実的な制限数の設定である」と述べた。

 重要な問題となっているのが既存法令の強制力の弱さであり、これは、貨物の検査をしないことやワシントン条約に基づく輸出許可証の偽造、そして執行機関での研修不足などの要因が積み重なったことによるものである。

 本報告書では、研修内容を改善し、インドネシアの執行当局と関連する輸入国間の協力体制を強化して、アセアン野生生物法執行ネットワーク(ASEAN-WEN)のような率先した行動を通して違法な野生生物の取引に立ち向かうとともに、ハコガメの個体数を調査することを提言している。

http://www.traffic.org/home/2009/2/23/box-turtles-knocked-out-by-excessive-trade.html

胆汁採取の犠牲になっていたクマ、中国の農場から救出

The Associated Press
2009年2月8日

(翻訳協力:山崎千佳子、編集協力:小林玲子)

 成都〔中国〕: 中国南西部のクマ農場で何年ものあいだ虐待的に胆汁を搾り取られて栄養不良になり、病気にかかっていた1

3頭のアジアクロクマが、動物保護団体のもとに引き取られた。その後27日現在、クマは快方に向かっている。

 香港を活動拠点とするAnimals Asia Foundation (AAF)は、国の認可を受けていた四川省のクマ農場からクマを保護した。同農場では、漢方薬として用いる胆汁を搾り取るために、クマの胃に穴を開けていた。

 このようなクマの飼育は中国で合法となっているが、AAFによれば、クマは動物虐待という点で違法行為を行っている農場から保護されているという。13頭のクマが6
に四川省森林保護局から引き取られたが、うち一頭は明らかに末期の肝臓ガンで重症だったため致死させたという。

 1980年代に中国は、
農場で生産した胆汁で市場の需要を満たすことによって野生のアジアクロクマを保護するという目的をかかげ、クマの胆汁採取を認め始めた、とAAFは説明する。しかし、クロクマの生息数に関する信頼性のあるデータが不足しているため、この政策がクロクマの保護に貢献しているかを評価するのは難しいようだ。

 野生のクマからは農場で飼育されたクマよりもよい胆汁が採れると信じられており、野生のクマは依然として密猟されているという。

 アジアクロクマは、胸の三日月形の模様からツキノワグマとも呼ばれている。

 中国政府の推定によれば、およそ7,000頭のクマが国内の247のクマ農場で胆汁採取を目的に飼育されているという。しかしAAFはその数は10,000頭にのぼると断言している。

 中国が承認しているクマの胆汁の採取方法は、クマの胃に永久に残る穴を開けて胆汁を取り出すという
もので、「フリードリップ」方式として知られている。

 AAFが述べるには、この方法でもクマに苦痛を与え、ゆっくりと死に至らせることがあるという。しかし、さらなる苦痛を伴うのはカテーテルやゴムチューブをクマの胃に挿入する方法だ。政府が禁止しているこういった方法を依然として採用する農場もあるという。

 現在AAFは2000年の中国政府との合意に基づきクマを保護している。合意内容は健康状態の悪いクマを中国政府と違法農場から引き取るというものである。クマは成都郊外にあるAAFのツキノワグマ保護センターに搬送される。同センターは2000年の合意以来260頭のクマを保護している。

 AAFによると、農場が具体的にどの条例に違反したかについて政府からの情報はな
いが

、たいてい小さな檻で飼育していたとか、定期的に散歩できる敷地がないという理由で出頭が命じられているという。


 6日に救出されたほとんどのクマには失明から肝臓の腫瘍に至るまで多様な病状が見られたという。顔中に白癬(はくせん)があり、檻の棒にかじりついたまま左右にはげしく体を揺さぶっていたクマもいたという。

 「今日保護したほとんどのクマは農場の檻の棒に頭をこすり続けたために傷跡や負傷が多数あります。監禁のためにノイローゼになっているのです」AAFの創立者であり事務局長でもあるJill Robinsonは語る。

 クマは最初すりつぶした果物を与えられる。その後何ヶ月にもわたるリハビリプログラムに入り、健康診断、治療を受け、隔離された回復用の檻の中で生活する。センターが
治療を施した260頭のうち、77頭が死亡した。

 7日、四川省森林保護局に何度か問い合わせの電話をかけたが応答はなかった。

«インドネシアで、年間500頭以上のオランウータンが取引される